マイクロソフトのサーチエンジン Bing が Google の検索結果を不当に「コピー」しているとして、Google のエンジニアがマイクロソフトを非難しています。画像はGoogle側が Bing を「釣る」ために仕掛けた ” The Bing Sting “, おとりページのもの。仕組みとしては、まず Google でも Bing でも検索結果がゼロかごく少ない、もともと存在しない言葉 (上の例では ” mbzrxpgjys ” ) を作りだし、その文字列でGoogle 検索したときだけ現れる偽の検索結果ページをセットアップします。続いてGoogle のエンジニアが自宅で Bing ツールバーのインストールされたインターネットエクスプローラを使用して問題の言葉をGoogle検索。「おとりページ」の最初のリンクをクリックすると いうもの。
結果は画像のように、約2週間後には Bing検索でも Googleのおとりページとまったくおなじ結果が返っています。検索語がそもそも存在せずBing検索でも結果ゼロだったこと、またBingの返してき たリンクと検索語を関連づける情報は Googleが人工的に設置したおとりページにしか存在しないことから、マイクロソフトは IE と ツールバーを通じて、ユーザーが Google 検索した結果を「カンニング」して bing にコピーしているというのが Google 側の主張です。設置された約100の罠のうち、Bing に取り込まれたのは7 から9件。(続きます)
検索情報サイト Search Engine Land に情報を提供したGoogle フェローの Amit Singhal 氏いわく、「競争相手が革新的なアルゴリズムを開発するのは構わない。だがコピーは革新ではない」「明白なズル ( ” cheating ” )」。またGoogleが検索アルゴリズムに膨大な労力を投入していることを強調して、「誰かを背負ったままマラソンを走った挙げ句、ゴールの直前で飛び 降りて先に行かれるようなもの」。
一方で、ずる呼ばわりされたマイクロソフトの側も「コピー」ではないと強く反論しています。Bing 担当のコーポレートVP Hary Shum 氏のコメントは、Bing の検索結果は1000以上もの異なる種類の情報を元に生成されており、ユーザーがどのサイトを訪れたか、どのリンクをクリックしたかなどもそのひとつ。 デー タの収集にはユーザーの同意を得ており、コピーしているのではなくユーザーから学んでいるにすぎない、といったもの。Googleの「おとり捜査」はそれ が単純なコピーのように見える状況を作りだすために巧妙に設定されたもので、注目を引くための「スパイ小説じみたスタント」(Shum氏)だと語っていま す。
Google側が使った ” Bing Sting ” の詳細と結果については、リンク先のSearch Engine Land記事を参照。Googleによれば、そもそも Bing による「コピー」疑惑が芽生えたきっかけは、綴りを間違えて検索したときのトップ結果が Google と Bing で一致する例が多くなったこと。そのような場合、Googleは独自のアルゴリズムにより修正候補を推測して再検索した結果を表示しますが、Bing では「もしかして……」のような表示もなく、いきなりGoogleとおなじリンクがトップに来ます。もしBingが Googleと独立して結果を得ているならばGoogleと同等の修正候補推定エンジンの開発に成功していることになり、そうでなければ結果だけをコピー しているかもしれず、いずれにしろ問題だ実験せねば、が発端です。
さて、Google側の主張とマイクロソフトの反論はおよそ以上のようなものですが、果たしてこれがシロなのかクロなのか、あるいはGoogleのおとり 捜査は成功したのか、「コピー」なのか否かは単純には判断しがたい問題です。個別の問いに切り分ければ、IEユーザの任意提出データを経由しているとはい え、Bing が Googleにしかない独自情報を取り込んでいるのは事実。また検索語の推測修正のように、競合他社が開発した技術にこっそり「ただ乗り」している結果に なっているのも事実ではあります。しかし Bing の検索結果が Google そのままばかりかといえばもちろんそんなことはなく、Googleの実験でも、設置された約100のハニーポットのうち複製が確認されたのは7から9 と比較的少ない数のみ (理由は不明)。またユーザーからいえば、独自アルゴリズムだろうが複数の他社サイトを参照していようが、より使える結果が返ってくることがサービスの価 値といえます。ユーザーを通じたデータ収集をどう捉えるかは簡単に結論が出そうにありませんが、Bing はとりあえず隅のほうに「powered by Google ユーザーほか」とでもクレジットを載せておくと良いかもしれません。
コメント