アイスランドに「国ごとウィキリークスになる」という動きがあるのをご存じだろうか。人口約32万人の北欧の小国アイスランドの議会は昨年6月、メディアなどに情報を提供・公開した人物を保護する法律などを整え、報道の自由や情報公開を促進する政策に向けた指針(通称「IMMI」=アイスランド現代メディア法案)を承認している。脱税の温床になると批判も多い「タックスヘイブン(租税回避地)」を逆手にとった「情報ヘイブン構想」で、”情報立国”を目指す試みだ。
ジャーナリストの津田大介氏は2011年10月27日、ニコニコ生放送の番組「『デモクラシー・ナウ!』ウィキリークス特集『アイスランドは情報天国をめざす』」に出演し、このようなアイスランドの動きを、「すごく乱暴に言えば、アイスランドが国ごとウィキリークスになってしまえばいい」という構想であると説明した。津田氏によると、アイスランドは、「ジャーナリストヘイブンという形で、いろんな危ない情報とか告発とか、世界中の情報を公開する”国営ウィキリークス”みたいな形を進めることがわれわれの道じゃないか」と言い始めたのだという。
■ウィキリークスが後押し
同番組に出演した一橋大学大学院社会学研究科博士後期課程の塚越健司氏によると、この構想はジュリアン・アサンジ氏などウィキリークス運営者らが後押しした部分がある。世界金融危機によって経済に深刻な打撃を受けた2008年秋以降、アイスランドは国を再建する術を探っていた。そのような状況で迎えた2009年夏、ウィキリークスがアイスランド最大手のカウプシング銀行の内部資料を公開。既に国有化されていたカウプシング銀行のずさんな融資の実態を暴いた資料は国民の注目を集め、ウィキリークスの活動は同国で賞賛を浴びた。これが契機となり、”国おこし”の策としてアイスランドが「情報ヘイブン」になることを目指すべきというウィキリークス運営者らの提案に、議員や弁護士らの支持が集まったという。
塚越氏は、
「IMMIは、あと1?2年かかると思うがこれから詳しい法律を作っていって、出来たあかつきには『言論の自由賞』を作って毎年祝おうじゃないかという盛大な構想もある。また、例えば日本の小さいメディアや暴露系の情報を発信するところが、日本で情報を出したら潰される。なのでアイスランドに籍を置いて、アイスランドの会社だということにして情報を出せば、アイスランドの法律が適用されるので捕まらない。税金は納めてもらってアイスランドの税収を上げようっていう考えですね」
と可能性を語った。しかし塚越氏は一方で、今年1月に米国司法省がツイッター社に対して、ウィキリークスに協力した経験のある個人のアカウント情報やダイレクトメッセージの記録などの提出を命令したことに触れ、「アイスランドだけがIMMIというのを作っても、世界中が変わらないと難しい問題も実はある」と問題点も指摘した。
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