14年半ぶりの運転再開直後に発生したトラブルから9カ月。高速増殖原型炉もんじゅ(福井県敦賀市)で原子炉内に燃料交換用の装置が落下した問題で、日本原子力研究開発機構は24日から、引き抜きに向けた作業に入ることを明らかにした。
福島第一原発事故を機に、もんじゅを含む核燃料サイクルそのもののあり方が厳しい視線にさらされる中、今後の復旧作業の成否に注目が集まる。
原子炉内に引っかかっている炉内中継装置は長さ約12メートル、重さ約3.3トン。昨年8月26日、燃料交換を終えて装置を引き抜く際、つかみ具のねじが緩んでいたため、約2メートルの高さから落下した。機構は昨年10月、2度にわたって引き抜きを試みたが、いずれも失敗。同11月に装置の内部にカメラを入れ、変形が判明した。もんじゅは昨年7月に第1段階の性能試験を終えたばかりで、当初の予定では今春に第2段階の40%出力試験が始まるはずだったが、機構はこの落下トラブルのために試験再開の予定を2011年度中に遅らせている。
24日からの作業では、引き抜きで障害となる原子炉上部の構造物を約1週間かけて撤去する。その後、つり具を取り付け、原子炉内のアルゴンガスが漏れないようにカバーをかけたうえで、6月中旬に原子炉のふたの一部と装置を一緒に引き抜く。
引き抜きが成功すれば、原子炉のふたにあいた穴を埋め、取り外した原子炉のふたの一部と装置を点検する。順調にいけば、復旧作業を終えるのは秋ごろになる。機構はこれまでに、引き抜きに必要な機器の製造などに少なくとも約17億5千万円の費用がかかることを明らかにしている。■県「電源喪失起きても問題ない」
福島第一原発の事故を受け、もんじゅを含む核燃料サイクル構想を取り巻く環境は厳しさを増している。23日に開かれた県の「もんじゅ総合対策会議」では、県側から質問が相次ぎ、機構は説明に追われた。
岩永幹夫・県原子力安全対策課長は、装置の引き抜き作業中に外部電源が喪失した場合の対応を質問。機構は「いったん作業を中断し、電源復旧後に作業を続けるか、途中まで引き抜いた装置を元に戻すか判断するよう手順書に明記している」と説明。さらに「ボルトで固定してつり上げるので電源が長時間復旧できなくても作業中の状態を維持できる」と、安全上問題がないことを強調した。
核燃料サイクルをめぐっては、菅直人首相が今月16日、政策そのものの見直しの可能性に言及。もんじゅの行方も不透明になってきたが、機構の辻倉米蔵・敦賀本部長は「引き抜き作業を確実に終えることが私どもの責任」と述べた。
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