イスラエル軍は長年にわたり、ガザ地区のパレスチナ武装勢力が越境してイスラエル側に入ってくるのを防ぐ方法を見つけ出そうと試みてきた。その最新 の方法は、遠隔操作の機関銃、地上センサー、および無人機をネットワークでつないだ「自動殺傷ゾーン」を、60キロメートルの境界に沿って設置するという ものだ。このシステムは、『See-Shoot』(見て、撃つ)または『Sentry Tech』(ハイテク歩哨)と呼ばれている。
軍事情報紙『Defense News』のBarbara Opall-Rome氏は、「初期のSee-Shootシステムの配備計画では、ガザ地区境界のフェンス沿いに点在する小型陣地の数カ所に、0.5口径の自動機銃を設置することになる」と書いた。
機関銃を配備する陣地は、遠隔操作拠点と指令センターに光ファイバーで接続され、一種のロボット狙撃手の役割を果たす。これにより、約1500メートルもの範囲を強制的に立入禁止区域にできる。
IDF(イスラエル国防軍)の南部司令部はまた、立入禁止区域を数キロメートルに拡大するために、対戦車用ミサイル『Gill』や『Spike』の追加を検討中だと、当地の国防および業界の情報筋は話している。
機関銃は、銃砲および銃座の遠隔操作ステーション『Samson Remote Controlled Weapon Station』(Samson RCWSPDFファイル)に設置される予定だ。また、このシステムは「境界沿いに数百メートル間隔で」小型陣地に配備されることになると、『Jane’s Defence Weekly』は見ている。陣地は「(警報、センサー、鋼製扉で)防御とセキュリティーが図られ、未使用時にRCWSを保護する、格納式の装甲カバーを備える」という。
IDFのセンサーが標的になり得るものを発見すると、オペレーターは、電気光学(EO)式の昼夜センサー・パッケージを介して、Sentry Techに標的の確認または攻撃の合図を出せる。つまり、センサーが得た情報がRCWSのEOパッケージに転送されると、RCWSは回転して標的を捕らえ るので、オペレーターは対象を確認し追跡できるのだ。(中略)システムが故障した場合は各Sentry Techが互いにカバーでき、1ヵ所(の指令センター)は最大15ヵ所のRCWSをコントロールできる。
究極の理想は、人の介在が不要な「閉回路」のシステムだ。しかし、Opall-Rome氏はこう予想する。「幾重にも重なりあうセンサー・ネット ワークの忠実度に上層部が完全に満足するまでは、そして、コンピューター画面の前に配置される19歳や20歳の兵士がシステム操作の十分な訓練を受けるま では、攻撃ボタンを押す前に指揮官の承認が求められるだろう」
さらに、Opall-Rome氏はこう指摘した。「See-Shootが体現するIDFの目標は、境界地帯で承認不要の戦闘を遂行するというもの だ。これにより、侵入者の阻止や敵側による調査活動への対応といった目的で、歩兵を派遣する必要がなくなる」。See-Shootは、承認不要の戦闘とい うより大きな計画の一環と言えるだろう。
約400万ドルのこのシステムは、2007年の晩夏には完成する見込みだ。「しかし、イスラエル政府はすでにIDF南部司令部に対し、テロが広がる この地帯で最近急増した武力衝突に対処するため、このシステムの部分的な利用の開始を許可している」とOpall-Rome氏。
ハイテク歩哨の計画はよいアイディアのように思えるかもしれない。しかし、Haninah Levine氏は、この技術は2006年夏の第二次レバノン戦争の教訓を無視したものだと語る。同氏によると、この戦争の調査を担当したウィノグラード委員会は、「『承認不要の戦闘』の実態は『(敵が)比較的容易に到達できる地点から兵士と軍事的標的を引き払うこと』と表現し、この戦略こそが第二次レバノン戦争の下地を作ったIDFの失敗の主要素だと断じた」という。
問題は、技術が失敗を犯すことではない。技術は交戦状態が生み出す問題を解決しないということが問題なのだ。レバノン国境沿いで問題だったのは、交 戦規定がIDFに対し、ヒズボラから攻撃された場合しか発砲を許可していなかったことだ。そのせいで、電気フェンスの警報はいつも無視されたため、この技 術は結局役立たずに終わった。警報がヒズボラの攻撃準備を示しているとイスラエル側が気づいた場合でさえ、無視されたのだ。
ガザ地区のフェンス沿いでは、交戦規定ははるかに好戦的なものになっている。しかし、パレスチナ側はおそらく、武装していない市民をフェンスに近寄 らせることで、IDFがシステムの警報を無視するよう「しつける」ことを試みるだろう。「この地区で技術より重要なのは、ケースバイケースで個々の潜在的 な脅威の度合いを見極めなければならないということだ」という主張は、人権の観点と同様、軍事的な観点からも正しい。それに、ガザ地区からの撤退以来、パ レスチナ人によるフェンス沿いでのイスラエル兵誘拐として唯一知られているケースでは、IDFのラインのはるか後方に掘り進めたトンネルから現れたパレス チナ人が実行したのだ。こうした戦法だと、このシステムでは阻止しようがない」
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