ゆとりでも分かるFXがお勧めできない理由

はてなブックマーク経由でゆとりでも分かる投資入門?FX自動売買とは何か | 外資就活ドットコム ? トップ就活生に向けた就活情報提供サイトという記事を読みました。

若い人が自分の仕事以外に、金融資産を形成するために投資をしなければいけないという趣旨には賛成します。上記記事とはぜんぜん違う理由ですけどね。日本が成長国家かどうかとか、シンガポール香港に金融センターとして水を開けられて、なんてことは社会人になったばかりの若者には直接関係ないしね。

投資で、自分の仕事以外に収入源があるとこれから長い間いろいろ生きていくだけで安心だよね!という理由で十分だと思います。

で、本題。資産運用において、FXがお勧めできないのはなぜか。リスクが高いとかいう理由もあるのですが、そういうのは後回しにして結論。

理由:FXは基本ゼロサムだから。

ゼロサムと いうのはどういうことかというと、参加者全員の損得を足し合わせると、ゼロになるということです。儲かった人がいれば、同じだけ損する人がいるということ です。というのは、ある通貨を買った人がいれば、同じ分を売った人がいるということで、つまり、FXは常に通貨間の相対(あいたい)の取引だからです*1。金利の高い通貨を買えばスワップポイントという金利っぽいものはつくのですが、これも当事者間でやり取りされる金銭なので、やはりゼロサムです。

つまり、市場に参加する人の平均的な能力を持っているだけでは、取引を仲介する証券会社などへの手数料分だけ負けるということです。

しかもレバレッジがきいているので、手数料はその分大きくなります。取引手数料が取引額の0.1%だったとしても、50倍のレバレッジをきかせた取引をすれば、投じたお金の5%を手数料として持っていかれる計算になります。市場参加者の平均くらいの能力しかない人は、長くやればやるほど、取引をすればするほど、損をする。それがFXです。

さて、ここまでの文章は、FXを新しく始めてみようかという人が、「市場参加者の平均の能力」を持っているという前提でした。しかし、実際のところどうでしょう。冒頭の記事に書いてあるとおり、通貨はマクロ環境に連動します。ということは、たとえば日本円と米ドルを扱うのであれば、双方の国のマクロ環境、たとえばGDP成長率とか失業率の動向とか株価とかインフレ率とか中央銀行の金融政策とか銀行の信頼性とか、もう数限りない指標に絶えず目を配っていなければ通貨の変動の背景事情は分からないということです*2。そして、日経新聞をこれから真剣に読もうか、などと考えている学生よりも、為替市場に参加している専門家は、はるかにはるかにこれらの事情に詳しい。つまり、これからFXを始めようか、なんて考えている人は、当然、FX市場参加者の平均の能力など、持ち合わせていないのです*3

というわけで、冒頭の記事にうかうかと乗せられて皆さんがFXなんて始めたら、あっという間に大事なお金を持っていかれてしまうのが大半なのはみえみえです。だから、FXはお勧めできません*4

どうしても外貨投資をしたければ、レバレッジなどかけず、小さいお金をちびちび貯めるスタイルの預金をしたほうが良いと思います。

なお。ゼロサムというならば、投資は全て詰まるところ売り手と買い手の相対の取引なんだから、ぜーんぶゼロサムじゃないか、と思う人もいるかもしれませんが、たとえば株式などは、トータルでみれば成長率と連動して価格が上昇していきますので、ゼロサムではありません。日本みたいに長い間名目成長率が低迷している国はともかく、世の中の大半の国は、名目成長率はプラスで推移しています。さらに、株式であれば、インデックス投資(たとえばTOPIXのような、株式市場全体を代表する指数に連動する投資)を行うことにより、おおむね市場参加者の平均の能力に近いところで投資ができる手法もあります。

特に若い人が投資をするにあたっては、長い時間を自分のために使うのがその最大のメリットなのですから(参照→若い人が資産運用をしなければいけないたった一つの本当の理由−常夏島日記)、小さなプラスサムでも、それを積み重ねて複利効果を得るほうが最終的な儲けは大きいものです。

引用元: ゆとりでも分かるFXがお勧めできない理由 – 常夏島日記.

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