ネット薬物詐欺「S売ります」で塩送った

違法薬物売買用のネット掲示板を多数開設したとして、覚せい剤取締法違反(営利目的譲渡ほう助)で兵庫県警薬物銃器対策課に逮捕、起訴された無職男(36)が調べに対し、自身も偽密売情報を書き込み、1500万円近く稼いだと供述していることが26日、分かった。覚せい剤の購入希望者には塩を、大麻には茶葉を郵送していたといい、まさに「偽違法薬物詐欺」といった手口。ただ“被害者”が名乗り出にくいためか、詐欺容疑での立件はされていない状態という。

 兵庫県警薬物銃器対策課の調べによると、男は逮捕時、長野市在住で無職。9月27日、違法薬物を売買するためのネット掲示板を多数運営し続け、密売を手助けしたなどとして覚せい剤取締法違反(営利目的譲渡ほう助)容疑で逮捕された。

 10月中旬、違法薬物密売情報が書き込まれていることを知りながら、それを掲載させ続けたなどとして同法違反(広告ほう助)で起訴された。違法薬物をめぐり、ネット掲示板の開設者を営利目的譲渡ほう助で逮捕し、広告ほう助で起訴したことは、いずれも全国初だったという。

 男は約4年前から、ネット上に「薬味BBS」などのタイトルで、主に違法薬物売買情報を書き込むための掲示板を計60以上開設。それらには常時、本物の薬物密売情報が書き込まれ一部密売人が摘発されたが、開設者・管理者であるこの男本人は「偽密売情報」を書き込んでいたという。

 男の供述によると、男は掲示板に覚せい剤の隠語「S(スピードの頭文字)」や大麻の隠語「クサ(大麻草)」などの文字を使い、Sについては「01(=0・1グラム) 6000円」などと、書き込み。クサについては「1(=1グラム) 6000円」などと書いていたという。

 しかし、実際Sの注文者に対しては塩を、クサに対しては茶葉を郵送。その結果「1500万円近く稼いだ」と話したという。仮に注文者から文句を言われても「Sは『salt(塩)のS』の意味だ」「茶葉だってクサ。クサは茶葉の意味だ」などと反論することまで想定し、だましていたという。

 塩や茶葉を送られた“被害者”から被害届が出ているかどうかは不明だが、同課によると、これまで男は詐欺容疑に関しては立件されていない。違法薬物を注文しようとしたという後ろめたさから、被害を申し出にくい注文者が多かった可能性もあるが、男はまんまと「偽覚せい剤詐欺」で荒稼ぎした格好だ。

 ネット上における違法薬物密売は依然横行しており、兵庫県警など全国の警察では、今後も掲示板などへのマークを強める方針。

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