解明される宗教 進化論的アプローチ

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解明される宗教 進化論的アプローチ

ある寄生虫はアリの脳に寄生して行動を乗っ取り、アリが捕食者にみつかりやすい行動をとらせる。アリが食われれば寄生虫は牛や羊の胃の中に入り込む ことができるからだ。宗教は人間の脳に寄生して種を破滅させる観念のウィルス(ミーム)みたいなものだと”ブライト(宗教を信じない)”代表のデネットは いう。

「アラビア語のイスラームが「服従(身をまかせること・神に帰依すること)」という意味であることを、思い起こすべきである。イスラム教徒(ムスリ ム=神に帰依する者)たる者は、自分の利害関心よりもイスラム教の拡大を優先させるべきだという観念は、まさにその語源に組み込まれている。しかしこれは イスラム教だけの話ではない。そうだとすれば敬虔なキリスト教徒にとって、自分自身の幸福や命よりも重要なことは何だろうか?<御言葉>だ、と彼らはいう だろう。神の<御言葉>を広めることが彼らにとっての最高善であり、<御言葉>を広めるために子や孫を持たないように求められれば、それは命令となり、彼 らは懸命にそれに従おうとする。彼らは、ミームの命令に従って、自分の生殖本能をひるむことなく鈍化させる。」

デネットは宗教の正体を、脳のHADD(行為主体を敏感に探知する装置)に見る。私たちは複雑な事象に対して行為者の存在を想定する習性がある。暗 闇で物音がすればそこに何かがいるのではないかと思う。この習性があったおかげで、人類は未知の現象に対して効率的に対処することができ、結果として生き 残ることができたが、占いや「神」を生みだす原因にもなった。わからないことは「神の御心」ですべてが説明できるからだ。

進化の上で有利に働く脳の機能が生み出した観念が、やがて自己複製の力を発揮して繁殖し、人類の行動を縛るものになる。感染した人々はその観念のた めに自らを犠牲にすることさえ幸福に感じる。感染者は組織化されて強力な政治力を持ち、それと異なる観念を持つ組織に対して戦争さえ辞さないようになる。

デネットは宗教は人工物ではないという。生物学的な基盤や仕組みの上に必然的に生まれてしまうガン細胞みたいな自然現象であるとみなす。人間のよう な認知・知覚の主体があれば自然に宗教の観念は生まれてきて、社会的インタラクションの中で伝播していくというメカニズムを、生物学、社会学、物理学、認 知心理学などの研究を引きながら証明する。

そして宗教のはたらきを総合的に見たうえで、には確かに良いところもあるが、道徳的な生き方とか、心の健康は宗教でなくてももたらすことができるという。むしろ、宗教は美点よりも害の方が多いとデネットは考えているようである。

「第二次世界大戦は、確かに多くの人々から良いところを引き出したし、それを生き抜いた人々は、それは自分の人生において、最も重要なことであり、 それなしには自分の人生に意味はなかっただろうと、しばしば語っている。しかし、これは、また世界大戦をすべきだということをまったく意味していない。」

サンタクロースがいないとわかっても、何の害もない、と述べている。

米国では進化論が科学的に検証されていることを知っている人が25%しかいない。メガチャーチと呼ばれる巨大な教会組織が、宗教を超えて社会や政治 において力を増している。そして9.11に始まるイスラムとの対立。教育界で幅を利かせるインテリジェントデザイン論。デネットはそうしたアメリカの深刻 な状況に対する危機感がこの分厚い本の執筆動機だと強調している。

リチャード・ドーキンス『神は妄想である』やテリー・イーグルトン『宗教とは何か』などの議論につらなる大物哲学者による宗教無用論。日本ではカル ト宗教に対する批判くらいしかないわけで、ちょっと縁遠い問題意識だが、世界の問題の根幹を考える上で、このテーマは避けて通れないもののようだ。

ああ神様、「神様」って本当にいるのでしょうか?

解明される宗教 進化論的アプローチ – 情報考学 Passion For The Future.

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