全国で約9割の漁獲量を誇る北海道産コンブが、10月末までで前年同期比19%減の1万387トンと、記録的不漁となっている。
根室、釧路地区など道東の不振が目立ち、北海道漁業協同組合連合会(道漁連)は今年産の漁獲量予測を、過去最低だった2007年産(約1万7800トン)を大きく下回る1万6200トンに下方修正した。不漁の原因には水温の変化などが指摘されているが、現状では特定できていないこともあって、年末・年始に向け、品不足感は強まりそうだ。
◆総崩れ
「コンブが全く生えていない。海の底に真っ白い岩が見える」
羅臼漁業協同組合の井田一昭・羅臼天然昆布部会長(60)は、今年6月初旬に行った岸辺の繁茂調査でショックを覚えた。
その後も状況は改善せず、ダシ用の最高級品として知られる羅臼昆布の漁獲量は前年産比43%減の100トン、漁獲額も同4割減の2億7000万円にとどまる見込みだ。普段だと自宅前の浜が漁場なのに、部会員約200人は小型船で10分以上かけ、コンブが少しでも生えている知床半島の付け根方面での操業を余儀なくされた。この結果、ガソリン代も平年の2倍となる「二重苦」の状態という。
食用コンブの好漁場の根室半島も記録的な不漁に見舞われている。今年の漁獲量は昨年の半分程度。通常だと1等と2等で全体の半分を占めている高品質のコンブは今年、2割に届かず、1キロ・グラムあたりで1等と約300円の価格差がある4等が目立つ。漁師歴50年の根室市歯舞の亀谷栄さん(65)は「こんな不漁は初めて。漁協の融資を返せない」と嘆く。
道産コンブを格付けしている北海道水産物検査協会によると、10月末までの漁獲量は、根室地区が前年同期比47%減、釧路地区は同22%減。道内最大の漁獲量を誇る渡島地区も微減で、主要産地のうち前年同期を上回っているのは「日高昆布」の日高地区だけ。だが、ひだか漁協(新ひだか町)でも「平年と比べれば振るわない」と、表情はさえない。
道漁連は8月末、当初1万7600トンを見込んでいた今年産の漁獲量予測を、1万6200トンへと下方修正したが、その後も好転の兆しは見られない。最終的には1万5000トン台にとどまり、過去最低を更新する公算が大きくなっている。
◆高水温?津波?
コンブは発芽から約2年で収穫期を迎える。海水温が低いと成長が進む。北海道区水産研究所(札幌市)が釧路市沿岸で行っている調査によると、今夏の海水温は最高約17度で、平年比で1度程度、高かった。こうした傾向は2010年の夏から続いているといい、水温上昇がコンブの成長を阻害した可能性がある。
今年は流氷が根室半島にまで押し寄せた結果、コンブの株が広範囲にわたって削り取られたとする指摘や、東日本大震災による津波の影響を理由に挙げる関係者もいる。ただ、全道的な不漁を説明するにはいずれも十分な根拠に欠け、同研究所は「現時点で不漁の原因は特定できない」としている。
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