日本の福島原子力発電所の災害以後、公衆は当然ながら再び原子力エネルギーに対して懸念を抱くようになった。しかしビル・ゲイツの意見は違う。ゲイツは今日(米国時間5/3)ニューヨークで開催されるWiredビジネス・カンファレンスで 原子力発電、特に次世代モデルの原子力発電のメリットについて語った。不安は多分に過剰反応だと彼は考える。「キロワット時あたりで比較すれば原子力より 石炭による死傷者の方が問題にならないほど多い。しかし石炭の場合、事故一回あたりでみれば〔原子力災害で想定されるよりも〕死傷者が少ない。これは政治 家にとっては大きなメリットだ」とゲイツは述べた。
ゲイツは単に主張するだけでなく、自身の資金を投じている。彼は元部下で親友のネイサン・ミアボルド(Nathan Myrhvold)の原子力エネルギー事業、Terrapowerに 出資している。このスタートアップが開発中の次世代原子炉は、在来型に比べて核廃棄物の量を1000分の1に減らすことができる。
しかしゲイツが投資しているのは原子力ばかりではない。バッテリー、太陽光発電、バイオ燃料など10以上の会社に投資中だ。「われわれはすべての可 能性を追求する必要がある。エネルギー分野に対する人材の質も利用出来るツールも20年前とは比較にならないほど上がった。それでもわれわれがエネルギー 分野でブレークスルーを得られるかどうかは分からない」とゲイツは言う。
太陽光発電、風力発電には大きな可能性がある。しかしこれらは継続的にエネルギーを供給できない。それがゲイツが原子力を推す理由だ。「エネルギー 分野での前進は経済全体の拡大のために必須だ。しかし解決しなければならない重要な問題が3つある。コスト、安定性、環境への影響だ。価格が高すぎても困 る。供給がいつなんどき途切れるか分からないのでは困る。地球環境を破壊されても困る。そうした点が解決されねばならない」とゲイツは述べた。
その中でもコストは新しいエネルギー源が直面するもっとも困難な課題だ。「われわれは豊かな国に住んでいるためにコスト意識に乏しくなっている。わ れわれは太陽光発電や風力発電のために少々余分に払える経済力があるからだ。しかし世界に真のインパクトを与えるためには代替エネルギーのコストは現在の 化石燃料と競走できる値にならなくてはいけない。世界の80%の場所ではエネルギーはもっとも経済的なものが購入される。われわれはエネルギーが世界中で 適切な価格で提供されるよう助けなければならない」と述べた。
各家庭が分散発電して、余剰電力をスマートグリッドに戻すというアイディアはどうか? ゲイツは「魅力的なアイディアだが、実現性は低い」と評した。代替エネルギーとしては、砂漠の太陽光発電のような大規模な施設の開発は必要だろう。“家庭で発電するというのは魅力的なアイディアだが、エネルギー問題に本当に影響を与えるには砂漠の太陽光発電所のような大規模な施設が必要だ」と述べた。
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