気になるレバ刺しを、レバ刺し好きと食べ歩く

 

こんなプルプルした赤色ばかり出てきます

レバ刺しは、人によって好き嫌いの分かれる食べ物のひとつだと思う。
私は生肉全般が好物だけれど、中でもレバ刺しの魅力は他の内臓系と一線を画するものがある。

これを読んでいる方の中でも、あのプルプルの舌触りと濃い肝のコクに魅了されている人も多い事でしょう。

そういうわけで、無類のレバ刺し好き達と、おいしいレバ刺しの食べ歩きをしてきました。
今夜はレバ刺しの夢にうなされてください!

ほそいあや

まず、スタンダードなレバ刺しから数あるレバ刺しの形状でもっともよく見るものはこのタイプだろうか。薄すぎず厚すぎず、色も健康的なえんじ色。物心ついた時からこれをレバ刺しと認識して育ってきた、レバ刺しの見本のようなレバ刺しだ。
近くで見ると模様が見えます。角も立っていて新鮮そのもの。
このお店は、私が普段レバ刺しを食べている「加賀屋」。都内に点在しているが価格はまちまちで、近所の店では上のレバ刺しが280円というすばらしさ。とりあえずレバ刺しが食べたくなったらここに来る。私にとっては「普段使いのレバ刺し」だ。
ハツ刺しやコブクロ刺しもあります。
280円の幸せ・・・世の中よありがとう。

 

1店目「亀戸ホルモン」というわけで加賀屋のレバ刺しでも大満足なのだが、ここからはさらに個性のあるレバ刺しを紹介していこうと思う。
まずは亀戸と恵比寿に店を構える人気店「亀戸ホルモン」に来た。
こちらは恵比寿店の行列。亀戸店も、開店前に行っても1時間くらい並びます。でもおいしい物を待っている時ってちょっと楽しいですよね。
ここはおもに七輪でホルモンを焼いて食べる店で、そのホルモン焼きもかなりうまい。でも、サイドメニューとされるレバ刺しがこれまた本当に人気なんです。みてください、この暴力的までに鮮やかなレバ刺しを。
光輝いています。キラキラしています。宝石かもしれません。肝臓ですけど。
特徴はサイコロ状に切られていること。少しでも臭みがあってはこの切り方は不可能だそうだ。どれだけ新鮮なのかを見せつけているのである。今回のレバ刺し好きの皆さんは、「今日レバ刺し食べに行きませんか?」という突然の誘いにものってくれ、そのうえ1時間ちかく並んでくれた。レバ刺しの引力というやつはなかなか強力だと思い知る。

そして今、やっと目の前にレバ刺しが!

まずはレバ刺し好き会員ナンバー1番、ライター玉置さん。
本当においしい時の顔が出ました。

 

「血でできたプリンやーー!」と叫ぶ玉置さん「パンナコッタみたいでうまい」
「飲み込んだ後にレバーのまくが残る」
「そんなレバーのなごり雪がいと切なし」
「これがドナーなら、私は受け入れられる!」

色んなおいしい物を食べ尽くしてきたイメージのある玉置さんはグルメな印象だ。ふだんの生活では無表情このうえないけれど、おいしいものを食べたときだけ笑顔を見せる。・・・やるな亀ホル。

生肉好きパンクロッカーKさん「うまい!」
口いっぱいに含むこの幸せよ・・・

 

「ビートルズでいうアビーロード」「ずっと昔は食べる気にならなかった食べ物だったけど、こういうのに早く出会えていたらもっと早くレバ刺し好きになれたのに」
「口の中になじむ、食べやすい、受け入れやすい。自分と同じ遺伝子のようだ」
「ビートルズでいうとアビーロード」
「日々のストレスがなくなる味。一曲書けるね」

音楽家らしい感想をくれたKさん。確かにアビーロードは万人の耳に抵抗なくなじむと思う。

私も、見た目の凶暴さに似合わない食べやすさに感動した。レバ刺しの味そのものに小難しさは必要ない。レバー本来の味をピュアに舌に伝える事が、おいしいとされるレバ刺しの仕事なのだろう。

短時間しか居られないにもかかわらず、レバ刺しのためならと八王子から駆けつけてくれたSさん。
「これやばいわー」

 

「このレバーで子供あと3人産める」「甘くって、ふつうのレバ刺しのような血生臭さがない」
「噛んだ感じが歯切れ良い」
「本当にうまいもの食べると眉間にしわがよる」

小さい子供がいるため、このお店にほんの少ししか居られなかったSさん。レバ刺しと聞いて来ちゃったよ、と明るく笑っていた。こういう所にも、レバ刺しファンのレバ刺しに対する情熱が見て取れる。

しかも少子化に革命を起こすかのような発言まで飛び出した。

やっぱり大した食べ物だよ、レバ刺しって。

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気になるレバ刺しを、レバ刺し好きと食べ歩く
二店目「まるい」新東京タワー「スカイツリー」建設で話題騒然、東京都墨田区押上。地味な印象だった押上はこの建設によって一気に色めき立ち、皆が上を向いて歩くようになったという、ちょっとした美談もある。

そしてそのふもとには、驚くべき生レバーのかたまりが潜んでいたのだった。

いったいどこまで大きくなったら気が済むのか。
すぐそばにはスカイタワー並の人気を誇るもつ焼き屋が存在した。
16時の開店前でこの行列。
実は二週間前に予約を試みたが「予約分は一杯なので当日来て下さい」と言われてしまったのだ。あとで聞いた話によると、予約分は二ヶ月待ちだとか。この行列だとお店に入れないかもしれない・・・。ドキドキしながら待っていると、ついにお店が開店した。
私たちはギリギリ、外の席を得ることができた。並んでいる人たちの目の前という、常に静かなプレッシャーを受けるロケーションである。
今回のメンバーは右から、ライターM斎藤さん、Tさん夫妻、編集部石川さん、ほそい。全員「三度の飯より生レバー」がモットー。
醤油に座ってレバーを食べます。
石川さんの椅子がない上の写真でなぜ石川さんだけ起立しているかいうと、椅子がひとつ足りなかったのだ。

店員さんが「ちょっと待っててください」と持ってきたのは、醤油の一斗缶だった。こういうフリーダムなところが下町のよさだと思う。

 

レバーのオバケだ!そして、運ばれてきたレバ刺しがこれである。

ええっ!!と全員息を呑んだ。

(食べ物レベルで)見たことのないビジュアル!生まれて初めてレバーを見て怖いと感じた。
牛レバ刺しと仔牛レバ刺しを二人前ずつ頼んだので、これで四人前という事になる。一切れが普通のレバ刺しの3?4切れはある。なんだこの厚さは・・・。ボリューム的におかしいぞ。レバーってお酒のおつまみですよね。

確かにレバーなんだけどレバーとは思えない変な感じ。ゼラチンで固めたお菓子を見ているようだった。

カクカクした角。刺身というか塊。

 

食べます一通り驚いたので、そろそろ食べます。まずは一番若手のレバ刺しファイターM斎藤さんにいってもらいましょう。レバ刺しは大好きだそうですが、こんなレバ刺しは見たことないとの事。
おそるおそる持ち上げる。
「うう・・・これはすごいです」

 

「こんなレバ刺し初めてです」「肉厚でレバ刺しのような感じがしない」
「初めてメガネをかけた時のような」
(他、言葉にならない声)

メガネのくだりはどこかで聞いたことがある(と思ったらこの記事だった)。私も初めてメガネをかけた時の事は覚えているが、これが本来の世界だったのか、という感動がある。レバ刺しについて開眼したと言ってもよいのかもしれない。

「クレーンゲームみたいに重い!」
あこがれのレバ刺しにようやく出会えた感動を語るTさん。

 

「びっくりしました」「歯ごたえ、噛みごたえがちゃんとある」
「噛んだ感じが、ふわっといかずにしゃりっとする」
「箸で持ち上げるのにこんなに力の要るレバ刺しってあるのか」

Tさんはネットでこのお店を見て以来、ずっと気になっていたと言う。念願かない来店し、どっしりと重いレバーの塊を一口で食べる。その間、ずっと笑顔がとぎれなかった。幸せってこういう事だと思う。

色が濃いほうが親、薄いほうが子(だったと思います)。子のほうが少しみずみずしい印象。
続いてはMさんが挑戦します(挑戦という言葉がしっくり来るレバ刺しです)。
「んー、んー、んー・・・」

 

「言葉にならない」「んーー(堪能中)」
「弾力すごい」
「大きすぎて口の中で無くならない」

Mさんの表情から感無量さが伝わってくる。口に入れてから、箸と小皿を持ったポーズのまま固まってしまった。

なんかすごそうだ。はたから未知の肉を食べている人たちを眺めていたが、私も俄然食べたくなってきた。

わからない・・・これがレバ刺しというのがわからない
「・・・・・・!!!」(なるほど、言葉が出ない)

 

口いっぱいにレバーをほおばると顔がヘンになる・・・という事がわかった。今まではむしゃむしゃ食べる食べ物とは捉えていなかったけど、あまりの塊っぷりに早く噛まないとずっとヘンな顔のままだ。でもレバ刺しだし、咀嚼するのがもったいないという気持ちもある。
そんな葛藤のすえ思い切って噛み砕くと「サリサリ」「サクサク」という歯ごたえだった。細胞の組織を感じる。ここで気づいたけれど、味わう段階ではまったく重ったるさがない。新鮮さゆえの甘さがあとを追ってくる。

間違いなく、今までで一番インパクトのあるレバ刺しだった。おいしいという概念を越えている。いや、おいしいのだけど。

しかし、こんな風に厚く切るとは。お店としては「こんなに厚く切っても食べられるほどのレバーですよ」という意味も込められているのかもしれない。つくづく贅沢な食べ方のできる店だと思う。

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気になるレバ刺しを、レバ刺し好きと食べ歩く
編集部石川さんは、以前この店に来たことがあるらしい。でも遅い時間だったのでレバ刺しが売り切れと告げられ、がっかりして帰ったという。
今日はリベンジですね!
いま口に含みました。
「すごいですね、これ」

 

「肝臓ってこういう物だったんだ」「新しい」
「普通のレバーを食べにきた人は『違う』と思うかも」
「嫌いな人が食べたらもっと嫌いになる」
「でもすごい」

コメントを見る限りではおいしそうに感じないところが面白いけれど、言っている事はすごくよくわかる。あこがれていたものが凶悪な何かだったという意外性があったのかもしれない。

でも、そこはレバ刺し好きなので心配無用だったようだ。こんな裏切られ方あるんだ・・・と、ここにも初めてメガネをかけた時のような楽しさを味わっている人がいる、と思った。

レバ刺しの他には、馬刺しと、
タン刺しを注文しました。以上、生ものオンリーの食卓。
全部おいしくて困る。M斎藤さんはタン刺しに「好きです」と告白をしていた。
このレバ刺しを食べたあとに馬刺しやタン刺しを食べると、オアシスのように感じられた。ただ、これまた厚く切られていて醤油の味がわからないほどだった。そして一時間くらいたった頃、雨が降ってきた。
これにてお開きにしよう。
ありがとうまるい。君のことは忘れない。
傘をさしながら残りの生肉を食べる人々。
そろそろ退散するかと思ったその時・・
メガネの水滴を拭うこともせず写真を撮る斎藤さん。
うれしそうふと見ると、M斎藤さんが傘に入ろうともせず、ずぶ濡れなのにすごく嬉しそうにしていた。

「このカメラ、昨日届いたんですけど、防水なんです。」

どうやら防水機能のついたデジカメを使えるのが嬉しくて、雨に喜んでいたらしい。

後日「レバ刺しが食べられたのと、雨が降ってきたのが超嬉しかった」と話していた。
あまりにも嬉しそうだったので、私も防水カメラが欲しくなってしまった。

さて、話が脱線しましたが、次のレバ刺しをどうぞ!

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気になるレバ刺しを、レバ刺し好きと食べ歩く
3店目「山根商店」「レバ刺しならうまい店知ってるよ」と、知人に教えてもらった、山根商店に来た。新宿三丁目駅から歩いて5分ほどの立ち飲み店で、会社帰りのサラリーマンの憩いの場所だそうだ。

開店は17時なので、その前に並んでおいたほうがよいと思い、早めに行ったがまだ先客はいなかった。
すっかり「レバ刺し=並ぶ」という癖が体に染みついている事に気づいた。

初の一番乗り。
このお店、一見飲食店には見えない。しかし時間が来ると変化する。
開店するとこの部分がよしずで巻かれる。
暗くなるとちょうちんが点灯。

 

今回のレバ刺しメンバーおなじみ石川さんと、編集部安藤さんにご協力いただきます。安藤さんのレバ刺し好きも筋金入りだそうです。
石川さんと「なんかいつも外ですね」と話していたら「外、楽しいですね」と安藤さん。確かに外で飲み食いするのはおいしいし楽しい。
早速レバ刺しを注文。
見た感じ、今までのレバ刺しとあきらかに違う。
ねとっとした質感。亀戸ホルモンやまるいと違って角が立っていない。

 

毎日食べたいレバーまるいと比べると、ほどよい大きさで平穏に口に運べて、味わう心の余裕もある。

レバ刺しは角が立っている事にこだわる人もいるが、これを食べると角なくなっていいやと思う。やわらかくまろやか。「毎日食べられる正しいレバ刺し」というサブタイトルをつけたい。

まろやかな極上スイーツだ(肝臓の甘味)
石川さんは「ふつうにおいしい」「嫌いな人でも好きになる」と、ある意味まるいの逆のような感想。
石川さんは「まるいも食べたかったけど、求めていたのはこれかな…」とぼそっと言った。その気持ちは私もわかる。安藤さんは、レバ刺しが好物であるけれどずいぶんと久しぶりに食べるそうだ。
表情に定評のある安藤さん、どんな反応をしてくれるのか。
久々のレバ刺しなんて、たまらないだろうな。
「・・・うまーー」
停止。
この顔からおいしさを察して下さいさすが安藤さん、記事では自分の顔を撮る事で読み手に内容を伝える人だ。
いまこの顔を見ているだけで、あのレバ刺しのとろけるうまさがよみがえってくる。

「レバ刺しやばい」「寿命のびる」「いやー、ほんといいですねレバ刺しは…」

としきりに言っていた。でもやっぱり、文章よりこの表情のほうが伝わりますね。

 

店のつくりが事務所っぽいレバーの卸もやっているせいか、店内があまり飲み屋にみえない、不思議な空間だった。

17時から20時の3時間しかやっていないのも面白い。みんな、レバ刺しで一杯やって帰っていくようだ

ビールサーバーがなかったら会社と言われても信じてしまいそう。ちなみに奥の三人はお客さん。
テーブルはどれを使ってもよい。手前のはテーブルというより作業台。
「安藤さん、ああいうのもおいしそうですよ」
牛肉刺し(絶品でした)
センマイ刺し(コリコリでした)

 

やっぱりレバ刺し一番の人たち実のところの話をすると、私はレバ刺しが本当に好きなのだが、ここ二週間レバ刺しばかり食べていたせいか、さすがに他のものを食べるとほっとするのだ。そしてここの牛肉刺しのおいしさに参ってしまい、レバ刺しはもう当分いいかな、と思ってしまった。

しかし、安藤さんだけは違った。
「牛肉刺しもたしかにうまいけど、レバ刺しには敵わないですよ。やっぱレバ刺しが最高です!」

その言葉にハッと目が覚めた。レバ刺し好きを自負してきた自分を恥ずかしく思った。ごめんレバ刺し。

「そりゃあレバ刺しだよ!」
「レバ刺しに決まってる!」
そうだ。この店は生粋のレバ刺し好きが集う店。レバ刺しを注文しないお客さんはいない。レバ刺しをこよなく愛す人ばかりだ。
この店でレバ刺しに対する弱音を吐くなんてもってのほかだった。ということで、我こそはレバ刺し好きと宣言する人は是非行ってみて下さい。レバ刺し好きの友達もできそうなお店です。
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気になるレバ刺しを、レバ刺し好きと食べ歩く
4店目「日本再生酒場」先ほどの店からほど近い、日本再生酒場に来た。新宿三丁目交差点そばの立ち飲み屋で、モツ刺しの品数が多い。おしゃれな内装のせいか女性客も多く、いつも賑わっている。
外の席まで満席でした。
「外でもいいです」と言うと、ドラム缶に案内された。楽しい。
メニューは段ボールながらも国産牛を主張。

 

レバテキここのレバ刺しはレバテキといって、軽く湯引きされている。そしてごま油と味付けネギが乗せられているので、そのまま食べられる。
レバー好きとネギ好きの夢を叶える食べ物。
いただきます(本日3皿目のレバー)。
レバーとネギの黄金比や?!
もう何を書いてもこの顔ほどの説得力は出せまい。
レバ刺しに抵抗のある人に食べてほしい味付けされているので、料理として解釈できる。湯引きがしてあり臓物感もやわらいで見えるし、味も生々しくない。
普通のレバ刺しはちょっとグロくて…という人の入門編にもってこいだと思う。

レバ刺しに興味はあるけどあと一歩踏み込めない。そんな人の未来を変える一皿になりうるかもしれないぞ、これは。

結論:レバ刺しはどう食べてもうまい!

 

レバ刺しマラソン、完走!4つ目のレバ刺し終了。ちょっとした達成感がある。打ち上げをしたい。いや、打ち上げでも同じような事するだけだよな。何はともあれ、二週間のレバ刺し巡りは内容が濃かった。

そしてもう一つわかったことは、安藤さんの表情による伝達はどんな言葉にも勝る究極の表現だと思った。完敗だ。

豚の脳みそ刺しを路上で食べられる店ってそうそうないかもしれません。
茹でた牛タンも、ほっとする味でした。

引用元: @nifty:デイリーポータルZ:気になるレバ刺しを、レバ刺し好きと食べ歩く.

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