東京電力、福島第一原子力発電所で相次いで起きている事故について下された最悪の「レベル7」の評価。旧ソビエトで起きたチェルノブイリ原発事故と同じ評価ですが、事故はそれほど深刻な状況なのか。水野解説委員の解説です。
水野解説委員:
今回、東電福島第一原発事故の評価がレベル5から7にひきあげられました。
これまで世界の原子力施設の事故は単独の事故が多かったわけですが、今回の事故は4基の原発で異常事態が同時進行する、同時多発的に起きている、世界で例を見ない深刻な事故だったということがあらためて示されたということになります。
原子力施設の事故の深刻度を示す評価尺度はIAEAなどが決めていて、
▽原子力施設の被害状況、
▽放射性物質が外部にどれだけ放出されたのか、
▽何人がどれだけ被ばくしたのか、
ということを評価して決めています。これまで原子力安全・保安院は事故の1週間後に、
施設の外にリスクを伴う事故ということで、
1号機から3号機まででレベル5と評価していました。これは1979年のスリーマイル島原発事故と同じレベルなんですね。
スリーマイルの事故では同じように燃料棒が破損しました。半分程度溶融し、放射性物質が放出され、住民も避難しました。しかし直後に冷却装置がはたらいて、事故は1週間程度で収束したんですね。それに比べて、福島第一の事故はその後も拡大を続け、燃料も1号機では70%程度が損傷したとみられ、4号機では使用済み燃料も破損する疑いがでていまして、放射性物質による影響も大きくなっていたんですね。
このため、日本のレベル5という評価に対しては、
国連の放射線影響科学委員会のワイス委員長が、「スリーマイルを上回っており、レベル5よりは深刻だ」という見解を示すなど、内外からも疑問の声が上がっていたんです。そして事故から1か月が経ち、原子炉の状況や放出された放射性物質の量もある程度推測できるようになってきて、原子力安全・保安院と原子力安全委員会があらためて評価した結果、福島第一原発全体で放出された放射性物質の放出量が
原子力安全・保安院の試算で37京ベクレル
原子力安全委員会の試算で63京ベクレルと評価され、
京は1兆の1万倍ですが、レベル7となったわけです。
では同じレベル7のチェルノブイリ原発事故と比較してどうなのか。
福島第一原発事故は今のところ、チェルノブイリ事故よりは下と評価されています。
というのも、チェルノブイリ事故では炉心が爆発しています。
大量の放射性物質が世界中にまき散らされまして、
発表では30人ほどが死亡したほか、周辺のこどもの甲状腺がんが増えるなど大きな影響が出ました。いまだに立ち入りが制限されている区域があります。それに比べて今回は爆発は起きたが壊れたのは主に原子炉建屋です。
放出された放射性物質の量もチェルノブイリの10分の1と評価されているので、事故の規模だけで言えばチェルノブイリよりは下と言えると思います。しかし先進国、しかも技術立国として知られる日本でレベル7の事故が起きたことの衝撃は大きく、しかも現在進行形であることに対して、世界が注目しているというわけです。
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レベル7ということで、チェルノブイリ事故のようなことが今後起きるのではないか?と心配する住民もいると思いますが、
このレベル7というのは、あくまで現状を評価しているわけで、将来こういうことが起きる、という評価ではないんですね。
先ほども説明したようにチェルノブイリのようなことが現在起きているわけではないんです。今後について必要以上に心配するような状況ではありません。
現在炉心への注水が続けられていますし、冷却が続けられている限りは今後、爆発的なことはおきないと思われます。
ただ、きのうも地震でおよそ50分間注水が止まったりしました。
汚染水の処理も難航しています。
今後チェルノブイリのような状況に近づくことがないよう、収束に向けた対策を急ぐことが求められます。
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