福島県内 1,600 箇所の放射線量を可視化してみた

福島県内の各種学校など、1,600 箇所以上で系統的に測定された放射線量を可視化してみました。これは、4 月 5 日から 4 月 7 日の期間で測定されたもので、相当数の測定者が現地を飛び回られたのだと推測します。ありがたいことです*1。主な測定場所は、小中学校や幼稚園、保育園等の校庭、園庭です。

どういう場所で子供を安心して遊ばせられるのか、また福島県内の放射線量の分布はどうなっているのかを知る上で、非常に大切な資料になるでしょう。警 告:あくまで、4/5 から 4/7 の測定値であり、かつ外部被曝量です。3/15-3/18 の頃は 10 倍程度高い放射線量だったはずです。また、実際には大気中ヨウ素の吸入による内部被曝も加味しなくてはならず、この測定からでは内部被曝は直接計算できま せん。従って、この測定で他地域より相対的に低い値だからと単純に安心できるものではありません。心配な場合は、行政機関や医療関係者に相談して下さい。

この広域測定は 4/5 から 4/7 のものなので、3/11 以降にどのような増減を示していたかを知りたい方は、放射線モニターのほうの記事を参照して下さい。放射線量率モニター更新中 (検索用キー:放射能)

▲ 赤の円は、20 km と 30 km 半径。20 km 円内と原発周辺はデータ点が不足しているので、DOE の測定や SPEEDI のものと印象が違うので注意。数値の単位は μSv/h (毎時マイクロシーベルト) です。赤の点は 10 μSv/h 「以上」を表します。もっと大きい図は、重いけど、白黒版カラー版がある。

元データはここで公開されています。これを、ネット上の有志 (10 人弱?) の手によって、全ての住所と経緯をまとめたのがここです。9 割くらいは僕が自動処理*2して機械的に住所と経緯を取り出せたのですが、うまく処理できなかった部分は、手入力で頑張っていただきました。感謝です。

この測定では、最大が飯舘村や浪江町で 10 μSv/h 超えています。これは僕の過去の記事でも触れた通り、原発の北西方向に放射線量の高い地域が延びているためです。

記事 1: SPEEDI の推定値と米国エネルギー省の推定値を比較してみた

記事 2: 原発の対応について、僕が政府をそれほど疑っていない理由

一方、これまでに十分理解されていなかった、福島市から郡山市にかけて放射線量が高くなっている事実が明らかになりました*3。この原因については、地形、降雨、風向きなどの複雑な条件が絡み合っていると思いますが、僕は考察できませんので、@hayano さんあたりを参照して下さい。実はこれSPEEDI の記事の追記部分の図で見えています。米国エネルギー省 (DOE) の 3/30 から 4/3 の期間の測定で、この地域で放射線量が高いことが分かりつつありました*4。この図を再掲します。

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▲ 3/30 から 4/3 の間 DOE の観測 (塗りつぶしたほう) に、SPEEDI の推定値 (茶色の等高線) を重ねたもの。左上のほうで緑色の領域が南北に広がっているのが、一番上の図で福島市から郡山市にかけて濃く見えている地域に相当します。手で拡大縮小しているので、2 つの図は 10% くらいずれています

「放射線量が高い」と言っても、20 km 圏内や飯舘村、浪江町に比べると 1 桁程度低いので、住民の方は驚かないで下さい。健康被害がどうなのか、子供を校庭で遊ばせて平気なのかどうかは、行政や医療関係者の指示の下に各自で判断して下さい。

さて、この 1,600 箇所の測定では、地表 1 cm の高さでの測定と、1 m の高さでの測定が必ず行われています。これまでの観測から、地表面付近のほうが放射線量の高い傾向にあることが知られていました。同種の測定で 1,600 箇所も測定点があれば、系統的に比較できます。それが次の図です。

▲ 横軸に地表 1 m での測定値、縦軸に地表 1 cm での測定値を、両対数で表示したもの。赤線は、best-fit の直線 (y = A*x)。傾き A は、およそ 1.3。

これを見ると、地表 1 cm での測定は、1 m での測定よりも平均的に 1.3 倍高いということが分かりました。電子線の大気中で走れる距離が短いからでは、検出器の有効体積の角度依存性か、などの考察もあるのですが、原因はまだ はっきりしていません。測定者の方々から、そのうち事実が明らかになるでしょう。

引用元: 福島県内 1,600 箇所の放射線量を可視化してみた – 宇宙線実験の覚え書き.

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