リビア東部のブレガ近郊で7日、北大西洋条約機構(NATO)軍機がカダフィ政権の政府軍と戦う反体制派の拠点を空爆し、犠牲者が出た。1日に続く誤爆で、NATOは「軍事作戦に停滞はない」としつつも、対応に苦慮している。
反体制派軍事部門のユニス参謀長は7日、拠点を置く東部ベンガジで会見し、「どうしてこんな間違いが起こるのか」と怒りをあらわにした。
参謀長によると、ベンガジ市内に保管されていた1950年代の旧ソ連製戦車12両と政府軍から奪ったより新しいT72型戦車6両を整備し、ブレガの前線 に配備しようとしていたところを空爆された。「戦車を前線に出すのは初の試みだった。NATOには事前に輸送を通告していた」。装備面で劣る反体制派に とっては虎の子の戦車だった。
これに対し、NATOのハーディング副司令官は8日の記者会見で「謝罪はしない」と明言。戦車のことは知らなかったとし、「反体制派との連携を改善することもない」と述べた。
NATOは飛行禁止空域の維持などを通じたリビア市民の保護、という国連安全保障理事会決議の任務を逸脱できないため、反体制派とは一線を画す必要があり、こうした対応につながっているとみられる。
しかし一方で、市民を守るための空爆にも限界が見え始めている。これまでの空爆で、リビア政府軍の軍事能力の3割程度が破壊されたとされるが、政府軍側 も、空からはとらえにくいトラックや小型の火器を使って市街地に潜む作戦を展開。反体制派との区別がつきにくくなっている。
3月末に多国籍軍から指揮権を譲り受けて以来、NATO軍による戦闘機出撃は8日までに計約1300回にのぼる。NATOは攻撃のペースを上げているというが、標的を「捕捉」できたのは4割にとどまり、政府軍と反体制派を見分けることの難しさを物語る。
ブリュッセル外交筋は「今後は地上戦に移行するか、反体制派に武器供与ができるかが課題になる」と話す。しかしいずれも、安保理決議の制約からNATOには難しい。
NATO報道官は8日の会見で「軍事作戦だけでは解決しない。政治的解決を見つけることが重要だ」と述べ、13日にカタール・ドーハで開かれる、英仏な どを中心とした関係各国の「連絡調整グループ」での協議に期待を寄せた。(リビア東部ベンガジ=貫洞欣寛、ブリュッセル=野島淳)
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