バードカフェおせちの件。
これに関して「おせち」の裏側で何が起こっているのかを
書いておきます。
今回の事件は「カフェ」のオーナーがおせちをたくさん
作ったけどクレームが殺到したということです。
500個詰めるの意外と(あるいは超)大変、っていう誤算が
あったと思うのですが、それ以外にも多分、不慣れな誤算が
あったんじゃないかと思います。
それは、年末はおせち用の食材の価格が急激に高騰する
ってことなんですね。
鯛の子にしてもいくらにしても数の子にしても活エビにしても、
年末は普段の2倍から3倍に跳ね上がります。
市場というのは相場の原点のような場所なので、
需要の加減がすぐに値段に跳ね返るんです。
いわんや今年は夏の猛暑による作物の需給バランスの崩れ、
年末に荒天になったので、その分の不漁の影響もあったりで、
おせち食材の年末相場は大変なことになっていたと想像します。
しかも、おせちづくりの決め手となる食材は
日持ちがしないものが多いので、高いとわかっていても、
年末に仕入れるしかありません。
数が足りないとか、仕入れられないなどというのは
許されないからです。
だからこそ、和食料理店は日頃から魚屋さんと懇意にして、
関係を作っておく必要があります。
おせちって1段でだいたい20種類の具材が入り、
だいたい4人前になっていて、全ての具材は「4」の倍数
入っています。ということは20種類の具だと80個
入っていることになります。
1つ200円付けで仕上がりは1.5万円程度。
1段1万円のおせちなら多分2人前なので40個@200円付
程度になっています。
高級な料亭などのお重は1段で3万円程度になっていますが、
1つ300円付で80個から90個程度入っているので
実はそれほど利益がありません。
なので、バードカフェおせちの場合、
これほど原価がかさむものを(手数料引き後)5,000円で販売、
しかもそこに利益を乗せようとしたわけです。
イメージ写真に掲載されていた食材を仕入れたところで、
完全に赤字ってことが見えた、という可能性があります。
たぶん、おせちを計画したときの原価計算では
利益が出たのかもしれませんが。
つまり作っても赤字なわけで、
正直それなら全額返金のほうがマシ、
って状況に陥ったのではないかと。
◆
これって翻って違う業界でも言えます。
「なんでこんなに高いんだよ、俺ならもっと安くで参入できるぜ!」
という業界とか商品とかって多いのですが、
実際にいざやってみると、思ったよりも売れなかったり、
季節による変動が大きかったりして、
「なるほど、それでこの値付けなのか」と気付かされるものが
多くあります。
たとえばリクナビとかすごく高いんですが、
実際には企業に営業かけて、説得して、契約取って、
その後もちゃんと大学生が来てくれるようにフォローしようと
思うとどうしてもあのくらいの値付けになるんですね。
安く値付けすることもできますが、フォローが手薄になって
結局クライアントから不満が出る。
一見して高いものは、それなりの理由があるので、
その理由がどうしても崩せないものなのか、
それともやり方によっては突破できるものなのかを
冷静に見極める必要がありますね。
少なくとも「おせち」という商品に関しては、
年末ボーナスを稼ぐための利益商品などでは
「決して」なく、感謝の気持ちでせっせと夜なべして作る
非収益商品です。
京都が誇る三つ星料亭「菊乃井」さんなどでもだいたい
300個くらいが限度です。
これは人手が足りないのではなく、材料が揃えられないんですね。
もちろん1社独占で仕入れることもできますが、
そうすると小さな料理店に素材がいかない。
そういう「1人よがり」は京都で1番嫌われるので、
有名どころはだいたいそうしています。
これだけ食文化が発達した日本でも、
それを支えている人たちの事情や、
経済事情ってあまり知られていません。
おせちは大量にそれぞれの具材を作っていくのですが、
出来上がったものが腐ってはいけないので、
29日の夜くらいから一切暖房を入れないのですね。
だから部屋も調理場も、超寒いんです。
部屋の中にいるのに白い息吐きながら、
美しさを保つべく神経使いながら盛り付けしていくのです。
また、だし巻なんかは大量に作れないので、29日の夜・
30日の夜は絶対に徹夜になります。特に30日の夜なんか
半分寝ながらう巻きを巻いているわけです。
だからほとんどの調理人さんは31日の夕方、おせちが無事に
配達されたのを見届けると気絶するかのように
寝てしまいます。紅白なんてみんな見られないんですね。
そういったこともぜひ知ってもらいたく、
今回はおせちについて書いてみました。
現場を知れば、「おせちは高い!ぼったくりだ!」なんていう意見や、
これを機会に一儲けしてやろうって人も減るはずなんですね・・・
引用元: 京都を遊ぶ社長のblog : おせちの裏側.
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