国の交付金などで運営されているすべての独立行政法人の財務状況についてNHKが調べたところ、投資先などが破産したり、個人向けの融資が焦げ付いたりして、1兆8000億円を超える資金が回収できないおそれがあることがわかりました。回収できない投資の中にはベンチャー企業や技術開発への支援事業が目立ち、これについて、専門家は「事業の計画や管理に甘い部分があったのではないか」と指摘しています。
NHKは、国の特別会計などで運営されているあわせて104のすべての独立行政法人について、設立以来の財務状況を調べました。その結果、投資先の企業などの経営が破たんしたり、個人向けの融資が焦げ付いたりして、回収の見込みがほとんどない「破産更生債権」が1兆1200億円余りに上っていることがわかりました。さらに、回収できないおそれがある「貸倒懸念債権」6900億円を加えると、あわせて1兆8200億円余りに上っていました。個別のケースでみますと、融資が焦げ付いたものでは、「住宅金融支援機構」が、前身の住宅金融公庫時代の個人向け融資を引き継いで5180億円が回収できない可能性が高いということです。また、投じた資金が回収不能になったケースでは、ベンチャー企業や技術開発への支援などが目立っています。このうち、「科学技術振興機構」は、技術開発事業に300億円を投じ、すでに11億円が回収できないおそれがありますが、この中には、食品の酸化防止剤の開発のために1億3000万円を千葉県の会社に投資したものの、わずか2年後に会社が事実上倒産したケースがありました。さらに、「情報通信研究機構」は、技術開発の促進事業に598億円を投じて、まだ1億円しか回収できておらず、中には、事業化が難しい障害者用の通信機器の開発に投じた2億8000万円を開発者が使い込んでいたケースもありました。いずれの機構も「投資の際の審査は厳密に行ったが、その後の状況は把握できなかった。結果として失敗した事業にも一定の意味はあったと思う」としています。こうした問題について、公会計が専門の青山学院大学大学院の鈴木豊教授は「独立行政法人には、民間がやらない事業を担う役割はあるが、公金が原資だと考えると、事業の計画や管理に甘い部分があったのではないか。回収不能となった経緯を検証し、今後の事業に役立てていくべきだ」と指摘しています。
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